<「豆腐屋の経営をえぐる」 株式会社 山久食品 代表取締役 和田司郎氏>
2018年6月24日(日)
全国豆腐品評会~中四国地区大会~での基調講演!
「豆腐屋の経営をえぐる」
株式会社 山久食品 代表取締役 和田司郎氏の話には膝が震えました。
まさに「豆腐屋の経営をえぐる」
・・・いやっ、「経営そのものの本質をえぐる」ような内容でした。
昔は5万軒はあったと言われる豆腐屋さん。
現在は6000~7000軒しかないと言われています。
そんな厳しい「豆腐屋の現状」を、和田さんは6段階で語ります。
1 そもそも、儲かってない
2 だから、休みが取れない
3 そうなると、体力的にきつい
4 もちろん、精神的にキツイ
5 さらに、豆腐作りが難しくて悩む
6 追い打ちを掛けるように、将来への不安(老後、後継ぎ)
でも和田さんが言われるのはこんなこと。
「10年も20年も前に、同じような悩みを抱えてたよね?
なのに、この10年で、抱えている問題を誰も打開しないのはなぜなんだよ?
問題の根本は“儲かってない”からだよ。
ここさえ解決すれば、他は解決するんだよ。
なぜ、儲けようとしない?!」
おっしゃる通り。
だいたい、「業界不況」なんてどこの世界にもあるもの。
その根本問題は「儲かってない」
「経営者ならまず儲けろよ」って話です。
そして、豆腐屋が儲けるためには
「売上を上げる前に、損益分岐点を下げろ」と言います。
これも本質。
さらに痛烈だったのは
「美味しい豆腐と、売れる豆腐と、儲かる豆腐は違うぜ!
同じ豆腐じゃないぜ!
“美味しい豆腐を作ったら売れる”は幻想だ!
そろそろ気づけよ」
と喝破されたんです。
いやー、これは豆腐業界の人はびっくりですよ。
さらに続けて言われたのは「美味しい豆腐ってなんだよ?」って話。
「10人が10人とも、“この豆腐が旨い”って言うならわかりやすい。
でも人によって“こくがあってトロッっとしたほうがいい”とか
“いやいや、あっさりした方がいい”と言う。
だから、何がうまい豆腐かなんてわからないだろう」
「そもそも、豆腐本来の旨さを競っても、
醤油かけて食べる人がほとんどでしょ?
料理しちゃうこともあるよね?!」
どの状態で“うまい”っていうか変わるよね」
そうなんですよね。
人によって味の趣味が千差万別。
そして、食べ方も十人十色。
「これが旨いんだよ」って押し付けそのものは考え直さないといけない。
さらの「職人」になりきってる豆腐屋社長に「経営者になれよ」といいます。
「経営者ってのは、経営の収入と支出を合わせないとダメだ。
多くの会社のボトルネックは工場にある。
徹底した効率化で
1 ロス率改善
2 作業時間の短縮しなきゃダメだ!」
「経営者が作業者になんなよ!
例えばラインをまっすぐ引く作業があるとするじゃん。
経営者がラインを引っ張ってたら、どこで曲がったのか、距離が足りないのか、近すぎて分からないじゃん。
だから経営者は現場から一歩離れて見ないとダメだ。」
さらに激動の時代にこんなテーゼを投げかけてくれました。
「過去の成功事例は通用しない時代だ。
でも、
過去の失敗事例も通用しない時代だ」
そう、つまりは「常識は通用しない時代」ってこと。
ありとあらゆる業界の常識を疑ってかからないといけない。
パッケージ業界もかつての営業活動から、
今や「販売支援業」でないと成り立たない時代。
しがらみから脱しないと。
さらに印象的だった3つのエピソードをお話します。
その1「出来ないこと不可能なことはない」
「おい、明日中に1000万円のカラオケセットを売って来いよ」って言われたらどう思います?
「そんなん無理でしょう?」
「何を無茶なことを言ってんねん?アホか?」
普通はそう思いますよね。
これは「不可能発想」だ。
でもね、ちょっと想像してみて。
「おい、松浦!お前の娘を誘拐した。
明日までに1000万円のカラオケセットを売らないと、娘の命はないぞ!」
そんな風になったら「無理ですよー」じゃないよね。
そうなったら何がなんでも売るよね。
死に物狂いだよね。
そんな思いで経営しろよ!
その2「信頼を得る発注」
お弁当屋さんから492個のがんもどきの発注がきた場合、多くの豆腐屋は「500個」のがんもどきを納入する。
「そんなん、サービスのつもりだろうけど、ぜんぜんダメだぜ」と和田さんは話します。
「がんもどきの失敗があるかもしれないから」→失敗作なんか作るな!信頼を失う!
「おまけだから」→弁当屋さんが492個の弁当を作った時に、がんもどきだけ余ってたら焦るぜ!?
492個だったら、492個にしろ!
それが信頼を生むんだ!
その3「経営に対するしたたかさ」
スーパーから昼前に突然の電話。
「松浦商店さん、すまんけど、100枚油揚げ追加発注で、午後イチで納品お願いします」
そう言われたら、ほとんどの豆腐屋さんが
「ありがとうございます!すぐに持って行きます!」って言う。
これじゃぜんぜんダメだ。
「したたかさ」が必要だ。
すぐに追加発注で、納品まで対応していると
「おい、松浦商店への発注は少なめにしておけ。
どうせ、足らなくなったら追加発注を喜んで持ってくるところだから」と、
そもそもの発注量が少なくなり、いいように使われる。
だから追加発注に関しては
「あ、いいですよ。追加で油揚げ100丁ですね。
取りに来てくださいね!」って言うんだよ。
「あそこは取りに行かないといけないと、スーパーのバイヤーが思ったら、
スーパーがちゃんと正式な発注管理するようになるんだよ。
次から注文が増えるんだよ。
そもそも追加発注ってのはバイヤーの管理ミスだろ。
取りに来て当然!」
すごい印象的なセミナーでした。
そして
「でも、取りに来いとか言うと、注文を切られるんじゃ」と思って言えない。
だからこそ、先に「儲けていないといけない」という、一番最初の根本的なところに戻るんです。
ホントに、経営をえぐる内容のお話でした。
和田さん、ありがとうございます!!
この記事を書いた人
パッケージマーケッター 松浦陽司
1974年、徳島県徳島市生まれ。著書「売れるパッケージ5つの法則と70の事例」と「売上がグングン伸びるパッケージ戦略」を出版。パッケージマーケティングの創始者。パッケージの企画やデザインだけではなく、商品開発の根幹であるブランディングも行い、多数の成果をあげている。中身商品は同じでも、パッケージを変えただけで売上10倍になったり、単価が5倍になったりする事例を生み出している。その他、執筆活動、講演活動なども行う。ブランド・マネージャー認定協会2級&1級&ミドルトレーナー。