【この炭酸せんべいの価格を5倍にしてください】~パッケージを変え、売り場を変え、価格を変える~
突然ですが、問題です。
「この炭酸煎餅の価格を5倍にアップしてください!」
(画像はイメージです)
同じ製品を、発想を変えて単価5倍にすることだって可能です。
あ、おはようございます。
パッケージマーケッターの松浦陽司です。
今のあなたは価格競争に巻き込まれていますか?
そうだとしたら、単価は上げたいですよね。
どれくらい上げたいですか?
3%?
5%?
10%もあげれたら御の字??
しかも、今は色んなものが値上げになってますからね。
でも、この「少しでも」の思想は危険信号かも知れません。
「原材料の高騰に付き、5%アップしたいんですけど」とお客さんに言いに行くと
「なにー、そんなんだったら一斉に相見積もりを取ってやるーーー」と言われちゃうかも。
その結果、「なんや、今の価格より安くなるやん」と言われちゃって。
値上げしようと思ったのに、逆に値下げさせられちゃうなんて悲しいことも起こりそうですね。
うーん、それは「単純値上げ」だからですね。
ある意味、仕方ないことではあるし、やるべきことではあるんですが。
でも発想をこのように変えてみては如何でしょうか?
「単価を5倍にできないか?」
「いやいや、10倍にできないか?」
これじゃ、単純値上げは無理ですね。
今までの延長線上の発想では、受け入れられるはずがない。
全く持って、売り場、売り方、顧客を変える必要がある。
さて、炭酸せんべいに話は戻ります。
単純には10枚以内なら100円くらいかなー。
世間一般の価格は。
これを103円に、105円にするって、まあ、今のご時世ならできると思います。
でも、5倍はちょっとねー。
ちなみに、炭酸せんべいって誰が買うでしょうか?
どこで売ってますかね?
何を買ってくれますか?
誰が?
何処で?
どのように?
このステップで考えてみると
誰が?→おじいちゃん、おばあちゃん
何処で?→スーパー、駄菓子屋
どのように?→おやつとして
こんな感じでしょうか?
それだと5倍は無理ですね。
でも、こんな感じでずらしたらどうでしょうか?
誰が?→観光客、特にベートベンの第九が好きな人
何処で?→ベートベンに縁のある土地(徳島の板東地区)
どのように?→お土産物として
うん、まったく違う価値が生まれそう!
徳島の板東地区は、ベートーヴェン「第九」がアジア初演の地!
そして今年は100周年。
6月1日に行われる、第九100周年イベントには全国から何万人と徳島に人がやって来るらしい。
そこで「炭酸せんべい」と売っても売れるはずない。
ベートーヴェンの第九を演奏したり聴きに来る人が欲しいものは???
ベートーヴェンじゃないっすかーーー。
ということでパッケージが生まれ変わりました。
第九せんべい
うーん、ベートベンが目立ちます!
そうです。
これが第九ファンが欲しいものだったのです。
それだけじゃ弱いので裏面を工夫。
ハガキにしちゃいました。
140円切手を貼れば、全国どこにでも送れるのです。
しかも、第九を聞いて感動した思いの文書をしたためて。
このパッケージに生まれ変わることによって、500円(税抜き)に生まれ変わりました。
なんと、価格5倍になったのです。
だって、誰に、どこで、どのようにが丸で変わっているので、単価が変わってもいいのです。
しかも収益のうち100円は第九保護活動に使われます。
社会性もめっちゃあるんです。
値上げを考えるとき、単純値上げもいいですが、こういった発想の転換もいかがでしょう?
鳴門西ライオンズクラブ 「第九せんべい」
住所
徳島県鳴門市大麻町板東辻見堂69−1
TEL
088-683-5977
FAX
088-689-1559
この記事を書いた人
パッケージマーケッター 松浦陽司
1974年、徳島県徳島市生まれ。著書「売れるパッケージ5つの法則と70の事例」と「売上がグングン伸びるパッケージ戦略」を出版。パッケージマーケティングの創始者。パッケージの企画やデザインだけではなく、商品開発の根幹であるブランディングも行い、多数の成果をあげている。中身商品は同じでも、パッケージを変えただけで売上10倍になったり、単価が5倍になったりする事例を生み出している。その他、執筆活動、講演活動なども行う。ブランド・マネージャー認定協会2級&1級&ミドルトレーナー。