午前一時の餡炊き~売上10倍のその先で、元祖鯱もなか本店 古田憲司さんが見つめ直した経営者のあり方~
2026年10月15日(木)
前日のナイトセミナーに引き続き、
徳島眉山倫理法人会のモーニングセミナーでも、
元祖鯱もなか本店
専務取締役の古田憲司さんに
お話しいただきました!

テーマは、
「午前一時の餡炊き」
前日のナイトセミナーでは、
「フォロワーゼロからの逆襲
~廃業寸前の老舗を救った発信の作法~」
というテーマで、
廃業寸前だった老舗和菓子店を事業承継し、
SNSなどを活用しながら、
3年間で売上を約10倍にしたお話を聞かせていただきました。
しかし、モーニングセミナーでのお話は、
ナイトセミナーとはまた全然違う。
SNSのテクニックでもなければ、
売上アップのノウハウでもない。
一人の経営者として、
古田さんがどのように生き、
どのように仕事と向き合ってきたのか。
そんなお話でした。

■もともと家業を継ぐ気は全くなかった
古田さんが大学へ進学したのは2003年。
翌2004年、
大学在学中に現在の奥様と出会います。
しかし当時の古田さんは、
将来、老舗和菓子店を継ぐなんて、
全く考えていませんでした。
目指していたのは……
パンクロック(笑)
しかも奥様もロックンロールが好きだったので、
そんな古田さんを受け入れてくれたそうです。
ところが25歳くらいになると、
奥様に縁談の話が来るようになる。
「これは何とかしないといけない」
ということで就職。
古田さんのご実家はサラリーマン家庭だったこともあり、
まずは会社員として働きます。
そして2011年、
27歳で結婚。
この時点でも、
奥様の実家である
元祖鯱もなか本店を継ぐ予定はありませんでした。
■「お菓子屋は大変だから、継がなくていい」
転機が訪れたのは2020年。
コロナ禍です。
元祖鯱もなか本店は、
実店舗だけではなく、
空港や観光地などへの外販も多かった。
ところが、人の流れが止まったことで、
売上は大きく落ち込んでしまいます。
3代目である奥様のお父様も高齢。
後継者もいない。
実は先代からは以前、
「お菓子屋は大変だ」
「儲からないし、休みもない」
「せっかくサラリーマンなんだから、そっちでやった方がいい」
と言われていたそうです。
だから、古田さん夫妻も、
家業を継ぐつもりはなかった。
でも、コロナ禍で苦しんでいる両親を見て、
奥様の中に、
「なんとかしたい」
という想いが生まれます。
そして古田さんも、
「この状況をどうにかしよう」
と動き始めました。
■「ケンちゃん、ケンちゃん」
実は古田さん、
以前、仕事をしていなかった時期に、
元祖鯱もなか本店で
お菓子づくりのアルバイトをしたことがあったそうです。
フィナンシェをつくりながら、
パートのみなさんと一緒に働く。
「ケンちゃん、ケンちゃん」
と声をかけてもらいながら働く時間が、
とても居心地がよかった。
「この仕事、いいかも」
と思ったそうです。
ところが……
これが甘い罠だった(笑)
実際に経営側として入ってみると、
お菓子屋さんはハードワーク。
しかも薄利。
作るだけではなく、
売らなければならない。
経営もしなければならない。
そこでご夫妻は、
奥様が製造。
古田さんが、
経営全般、マーケティング、管理、SNS。
それぞれの得意分野を生かして、
役割分担するようになります。

■売上10倍の華やかな物語、その裏側
ここからのストーリーは、
前日のナイトセミナーでも聞かせていただきました。
プレスリリースを出す。
それがネット記事になる。
さらにYahoo!ニュースに掲載される。
そこからテレビ、新聞、ラジオへ。
ネットも電話も鳴り続けるようになった。
問い合わせの電話の中には、
「ちなみに、ゆべしありますか?」
なんてものまであったそうです。
いやいや、
それ東北のお菓子やん(笑)
それくらい、
全国から問い合わせが殺到したということですね。
そして元祖鯱もなか本店は、
廃業寸前の状態から、
約3年で売上10倍へ。
ここだけを聞けば、
「すごいサクセスストーリー!」
です。
でも、事業が急激に成長すれば、
当然、現場への負荷も大きくなる。
古田さん自身も、
経営をしながら製造現場に入り、
深夜まで餡を炊くこともあったそうです。
だから、
「午前一時の餡炊き」
なんですね。
売上が伸びれば、
すべてがハッピーになるわけではない。
経営者には、
その成長を受け止める責任もある。
前日の華やかな「売上10倍」の話を聞いた後だからこそ、
このタイトルの意味が、
より深く感じられました。
■倫理法人会との出会い
そんな中、
古田さんが倫理法人会に入会したのが
2025年3月。
最初から、
倫理を深く学ぼうと思っていたわけではなかったそうです。
知人から誘われ、
「本の宣伝にもなればいいかな」
くらいの気持ちだったとか(笑)
ところが、
仕事でいろいろなことが重なり、
古田さん自身も余裕を失っていた時期。
毎週、倫理法人会へ行く。
そこで静かな時間を過ごし、
呼吸を整える。
古田さんにとって、
それは経営の知識やノウハウを得るためだけではなく、
「経営者としての自分自身を見直す時間」
になっていったそうです。
■「明朗」が遠のいていく
仕事が大変になる。
問題が起こる。
余裕がなくなる。
そうすると、
「明朗」
が遠のいていく。
これ、経営者なら分かる気がします。
忙しいから不機嫌になる。
問題が起こるから、
社員への言葉が強くなる。
「なんで分からないんだ」
「なんでやってくれないんだ」
となってしまう。
でも、そんな時に、
ある方から古田さんがもらったアドバイスは、
とてもシンプルなものだったそうです。
「明るくする」
「挨拶をする」
「人の話を聞く」
特別な経営手法ではありません。
当たり前のこと。
でも、その当たり前を
まず自分から実践してみる。
すると、
会社の中にも少しずつ変化が起こっていったそうです。
古田さんは、
「自分が変わると、会社の空気が変わる」
と話されていました。
相手を変えようとする前に、
まず自分が変わる。
倫理法人会らしいお話だなと思いました。

■一緒に学び続ける「倫友」
そしてもう一つ、
倫理法人会に入ってよかったこと。
それが、
「学びを続けられる仲間ができたこと」
だったそうです。
倫理法人会では、
一緒に学ぶ仲間を「倫友」と呼びます。
一人で何かを続けるのは難しい。
でも、
「あの人も頑張っている」
「自分もやろう」
と思える仲間がいると、
続けることができる。
経営者って、
意外と孤独ですからね。
何かを最終決断するのは自分。
その中で、
同じように学び続ける仲間がいることは、
大きな支えになるんだと思います。
■毎朝、神社で何を祈るのか?
そして今回、
ボクが特に印象に残った話があります。
古田さんは、
自宅から行ける神社へ足を運び、
お祈りをすることを日課にしているそうです。
では、何を祈るのか?
自分の商売繁盛?
売上アップ?
違います。
家族。
社員。
そして、
その日に会う予定の人たち。
一人ひとりの顔を思い浮かべて、
「その人が幸せでありますように」
と祈るそうです。
しかもルールがある。
「嫌いな人も省かない」
好きな人の幸せを願うのは簡単。
でも、
苦手な人、嫌いな人まで含めて祈る。
これを毎日の習慣にする。
人に対する自分自身の向き合い方が、
少しずつ変わっていくんでしょうね。
■金シャチをシーサーのような存在に!
そして後半、
古田さんのお話は、
これからの夢へと進んでいきます。
その名も、
「金シャチ シーサー化計画」
沖縄へ行けば、
いろいろなところにシーサーがいる。
観光客だけではなく、
地元の人々の生活にも溶け込んでいる。
古田さんは、
金のシャチホコも、
そんな存在にしたいと考えているそうです。
名古屋城にある歴史的なものとしてだけではなく、
もっと市民が親しみ、
もっと自由に使い、
もっと名古屋を誇れる象徴にする。
古田さんの表現では、
「名古屋肯定感を金シャチで爆上げする」
そして、
「金シャチを一大産業資源へ」
鯱もなか本店が中心となって、
金シャチを名古屋から世界へ届ける。
これが古田さんの
これからのミッションなんだそうです。

■老舗とは何か?
そして、古田さんから出てきた言葉。
これが今回、
ボクにはめちゃくちゃ刺さりました。
「老舗とは、
昔のままでいることではなく、
時代ごとに新しい意味を与え続けること」
100年以上続くから、
昔と同じことを続ける。
それだけではない。
守るべきものは守る。
でも、
「今の時代、この商品にはどんな意味があるのか?」
を考え続ける。
鯱もなかは、
単なる100年以上続く和菓子ではない。
名古屋の象徴である金シャチを通じて、
名古屋の人たちが自分たちの街を好きになる。
そんな未来まで描いている。
これって、
パッケージの仕事にも
そのまま当てはまると思うんです。
昔からある商品。
いい商品。
おいしい商品。
それだけでは、
なかなか価値が伝わらない。
今の時代のお客様にとって、
「この商品を買う意味は何なのか?」
そこを改めて考え、
ネーミングやデザイン、
パッケージによって伝えていく。
ボクたちが取り組んでいる
パッケージマーケティング®にも、
非常に通じるお話でした。
■ナイトとモーニング、両方聞いて分かったこと
今回、
古田さんには2日間、
違うテーマでお話しいただきました。
ナイトセミナーでは、
「フォロワーゼロからの逆襲」
SNSで目標を掲げ、
進捗を見せ、
応援者を増やしていく。
そしてモーニングセミナーでは、
「午前一時の餡炊き」
事業が成長する中で、
経営者自身がどうあるのか。
明朗。
愛和。
倫友の存在。
そして、
「運命自招」
運命は、
誰かから与えられるものではない。
自分の行動によって、
自分の境遇をつくっていく。
パンクロックをやろうと思っていた青年が、
まさか100年以上続く老舗和菓子店を継ぐとは、
当時は思っていなかったでしょう。
しかも今は、
「金シャチを名古屋から世界へ」
という夢まで持っている。
人生って、
本当に分からないものですね。
でも振り返ってみると、
その一つひとつの出来事に対して、
「どうするか?」
を自分で選び続けた結果、
今の古田さんがある。
そんなことを感じた
モーニングセミナーでした。
古田さん、
ナイトセミナー、
そして翌朝のモーニングセミナーと、
2日間にわたって、
たくさんのお話をありがとうございました!
そして今回、
古田さんを徳島にお招きするにあたり、
お声がけ、会場準備、受付、進行など、
たくさんの方に動いていただきました。
徳島眉山倫理法人会のみなさんにも、
改めて感謝です。
古田さんを阿波おどり会館まで送って行った時、
「徳島に来てよかった!」
と言っていただけました。
よかった!
ボク自身も、
古田さんを徳島に推薦させていただいて、
本当によかったです。
ナイトセミナーとモーニングセミナー。
同じ古田さんのお話でも、
まったく違う角度から学ばせていただいた2日間でした。
ありがとうございました!
この記事を書いた人
パッケージマーケッター 松浦陽司
1974年、徳島県徳島市生まれ。著書「売れるパッケージ5つの法則と70の事例」と「売上がグングン伸びるパッケージ戦略」を出版。パッケージマーケティングの創始者。パッケージの企画やデザインだけではなく、商品開発の根幹であるブランディングも行い、多数の成果をあげている。中身商品は同じでも、パッケージを変えただけで売上10倍になったり、単価が5倍になったりする事例を生み出している。その他、執筆活動、講演活動なども行う。ブランド・マネージャー認定協会2級&1級&ミドルトレーナー。







