フォロワーゼロからの逆襲 ~廃業寸前の老舗を救った発信の作法~ 元祖鯱もなか本店 古田憲司専務
2026年10月14日(水)
徳島眉山倫理法人会の特別ナイトセミナーが開催されました!
今回、名古屋からお越しいただいたのは、
元祖鯱もなか本店
専務取締役の古田憲司さん。

テーマは、
「フォロワーゼロからの逆襲
~廃業寸前の老舗を救った発信の作法~」
実は今回、
古田さんを徳島眉山倫理法人会に推薦させていただいたのはボクです。
きっかけは、古田さんの著書
『鯱もなかの逆襲』。
「金なし。コネなし。従業員なし。」
そんな状態から事業承継し、
売上を約10倍にしたというお話に興味を持ち、
今年1月には名古屋のお店まで会いに行きました。
実際にお話しして、
「この人の話を、ぜひ徳島でも聞きたい!」
と思ったのが、今回のナイトセミナーにつながりました。
■2020年末、廃業する予定だった老舗
元祖鯱もなか本店の創業は明治40年、1907年。
そして1921年に誕生したのが、
名古屋城の金のシャチホコをかたどった「鯱もなか」です。
もともとは和菓子店でしたが、
その後、京都の洋菓子店で修業した職人さんの影響もあり、
和菓子と洋菓子の両方を扱うお店に。
しかし時代が変わり、
洋菓子専門店などが台頭。
さらに2020年、コロナ禍が襲います。
3代目店主は高齢。
後継者もいない。
売上は1/3。
そして在庫の山。
空港、名古屋城、セントレアなど、
人が集まる場所から人が消えてしまった。
ついに先代から、
「もうやめる」
という言葉が出ます。
2020年末で廃業する予定だったそうです。
そこで立ち上がったのが、
先代の娘である古田さんの奥様と、古田さんでした。

■きっかけはFacebookグループ
転機となったのが、
「WakeAi(ワケアイ)」
という、コロナ禍で苦境に立つ生産者を支援するFacebookグループでした。
古田さん自身がユーザーとして、
そこで苺のジェラートを購入。
食べてみると、めちゃくちゃおいしい。
「じゃあ、うちの商品も出せないか?」
と問い合わせてみると、
「出せますよ」
との返事。
そこで鯱もなか本店の商品を出品してみたところ、
爆発的に売れたそうです!
「しっかりSNSをやったら、いけるんじゃないか?」
ここから本格的な逆襲が始まります。
2021年、
それまで専業主婦だった奥様が4代目社長に就任。
オンラインショップもリニューアルし、
ネットで商品を購入してもらう導線を整備。
そして2021年9月、
プレスリリースを出します。
これがネット記事になり、
さらにYahoo!ニュースへ。
記事のタイトルは、
「廃業寸前の老舗、専業主婦の奮闘」
この「廃業寸前」「老舗」「専業主婦」という言葉が、
非常に強いパワーワードになったそうです。
Yahoo!ニュースのトップに掲載され、
記事は約60万アクセス!
注文が入ると、
スマホから「チャリーン」と音が鳴る設定にしていたそうなのですが、
チャリーン!
チャリーン!
チャリーン!
チャリーン!
鳴り止まない(笑)
そこから新聞、ラジオ、
東海テレビの15分間の特集、
さらに全国放送へ。
とんとん拍子に知名度が上がり、
3年間で売上は約10倍になりました。

■「バズった」で終わらなかった理由
ここまで聞くと、
「たまたまYahoo!ニュースでバズったからでしょ?」
と思ってしまいます。
でも、古田さんのお話で、
ボクが特に勉強になったのはここでした。
バズる前に、
・ECサイトをリニューアルしていた
・初めての人でも買いやすい「お試し商品」を用意していた
・LINE公式アカウントを整備していた
つまり、
「売れる準備」
をしていたんですね。
特に「鯱セット」は、
クリックポストで送れるように設計。
一気に1000セット以上の注文が入り、
発送作業が追いつかない。
「こっちの郵便局のポストは25時まで」
「あっちの郵便局は26時まで」
と、深夜まで郵便ポストを回って、
パンパンになるほど投函していたそうです(笑)
そして、
Instagram
X
オンラインストア
実店舗など。
さまざまな接点から、
LINE公式アカウントへ誘導する。
一度買って終わりではなく、
お客様とのつながりを残していく。
古田さんのお話を聞いて感じたのは、
「奇跡を活かせるかどうかは、事前の設計次第」
ということ。
チャンスが来てから準備するのでは遅い。
チャンスが来た時に、
ちゃんと受け止められる器をつくっておく。
これはSNSだけじゃなく、
経営そのものにも言えることだなと思いました。

■SNSで「応援される人」になる4つの基本姿勢
そして後半は、
古田さんが実践しているSNSのお話。
大切にしているのは、
①目標を持つこと
②他人に見えるように掲げること
③強く執着すること
④進捗を見せていくこと
だそうです。
完成した結果だけを発信するのではなく、
「これをやります!」
「ここまで来ました!」
「あと少しです!」
と、プロセスを見せていく。
すると最初はただ見ていただけの人が、
だんだん応援してくれるようになる。
そして、その目標自体が
「みんなの共通の目的」に変わっていく。
SNSとは、
単に商品を宣伝する場所じゃないんですね。

■「この投稿にいいねしてください!」
古田さんらしい面白い事例もありました。
大事な商談を翌日に控えていた時、
「明日、大事な商談があります。
営業資料として使いたいので、
このポストにいいねしてください」
とSNSに投稿。
すると、
9760いいね!
その数字を実際に商談相手に見せたところ、
採用につながったそうです。
SNSの数字そのものを
営業資料にしてしまったわけです。

■いいねの数だけ縄跳びします!
さらに強烈だったのが、
「全国ご当地おみやげブックカバーコンテスト2025」。
古田さんは、
「ここなら日本一になれるかもしれない」
と考え、
Xで猛烈に応援を呼びかけます。
「何卒何卒何卒何卒何卒お願いします!」
と毎日ごり押し(笑)
そして、
「このポストについた『いいね』の数だけ、
中の人が縄跳びで飛びます」
と投稿。
古田さんとしては、
300回くらい飛ぶ準備をしていたそうです。
ところが……
2万4000いいね!
さすがに1日では無理。
でも「1日で飛ぶ」とは言っていない。
そこで毎朝5時から、
1日1000回。
24日間かけて飛び続けました。
そして24日目が、
コンテスト最終日。
最後はライブ配信まで実施。
海外からもコメントが入り、
「お前は何をやっているんだ」
みたいなやり取りまで入ります。
結果、
SNS得票数1位!
愛知県代表の「鯱もなか」が、
SNSで最も多くの支持を集める結果になりました。
でも、これも単なる「SNSで票を集めた」という話じゃない。
毎日縄跳びをして、
進捗を見せ続ける。
するとフォロワーも、
「今日は何回飛んだ?」
「あと何回?」
「頑張れ!」
と参加してくれる。
いつの間にか、
「古田さんの挑戦」
だったものが、
「みんなの挑戦」
になっていく。
これが、
「応援されるSNS」
なんでしょうね。

■お客さんから「物語の当事者」へ
古田さんのお話の中に、
「共通の目的に向かう仲間になる」
という言葉がありました。
「推しのために何かをする」
そこには正のエネルギーが生まれ、
いろいろな方向へ交換されていく。
そして予期できない出来事が起こると、
そこに感動が生まれる。
見ていた人自身が、
ストーリーの当事者になっていく。
これを「プロセスエコノミー」と呼ぶこともあるそうです。
SNSで大切なのは、
フォロワーを増やすことだけではない。
「応援者を増やすこと」
なんですね。
■100年以上の老舗を「推される名物」へ
そして最後に、
古田さんが実践しているブランドづくりのお話。
一つ目は、
「看板商品を『推される名物』へ」
という考え方。
元祖鯱もなか本店には、
1921年に誕生した「鯱もなか」があります。
100年以上続く、
名古屋のシンボル・金のシャチホコをかたどった商品。
この「鯱もなか」という核を信じ抜く。
一度は消えかけた、
「大正10年生まれの105歳」。
その歴史そのものを、
ブランドの希少価値として打ち出していく。
そして二つ目が、
「文脈を更新する」
ということ。
100年続いているからといって、
昔と同じ伝え方を続けるわけではない。
SNSで映えるビジュアルにする。
誰かに教えたくなる
「語りしろ」をつくる。
そして三つ目が、
「威厳」から「親しみ」へ。
SNSでは時には、
「老舗なのに、そんなにふざけて大丈夫?」
と言われるような発信もする(笑)
でも古田さんは、
「歴史に対するリスペクトがあって、その中で遊ぶ」
という姿勢を大切にしているそうです。
老舗 × 遊び心。
鯱トッツォをつくったり、
既存の型を再利用して新商品を生み出したり、
AIをクリエイティブ制作に活用したり。
守るべきものは守る。
でも、伝え方は時代に合わせて変えていく。
これも非常に勉強になりました。
■SNSは「売る道具」ではなく「応援者を増やす道具」
今回の古田さんのお話を聞いて、
改めて感じたことがあります。
SNSというと、
「どうやったらフォロワーが増える?」
「何時に投稿したらいい?」
「どうやったらバズる?」
というテクニックの話になりがちです。
でも古田さんのお話は、
そこではありませんでした。
目標を掲げる。
そこへ向かう姿を見せる。
失敗も含めて進捗を見せる。
そして応援してくれる人と一緒に進んでいく。
だから、
「この商品を買ってください」
ではなく、
「この人を応援したい」
「この会社を応援したい」
「この挑戦に参加したい」
という人が生まれてくる。
ボクも2011年からブログを書いて、
SNSでも発信を続けていますが、
「発信する」
だけではなく、
「応援したくなる物語をつくれているか?」
という視点は、
これからもっと意識していきたいと思いました。
そして、
「奇跡を活かせるかどうかは事前の設計次第」
これも経営者として忘れたくない言葉です。
古田さん、
名古屋から徳島までお越しいただき、
本当にありがとうございました!
そして翌朝。
古田さんには、
「午前一時の餡炊き」
というテーマで、
もう一つのお話をしていただきました。
こちらはまた、
別の記事でじっくり書きたいと思います。
この記事を書いた人
パッケージマーケッター 松浦陽司
1974年、徳島県徳島市生まれ。著書「売れるパッケージ5つの法則と70の事例」と「売上がグングン伸びるパッケージ戦略」を出版。パッケージマーケティングの創始者。パッケージの企画やデザインだけではなく、商品開発の根幹であるブランディングも行い、多数の成果をあげている。中身商品は同じでも、パッケージを変えただけで売上10倍になったり、単価が5倍になったりする事例を生み出している。その他、執筆活動、講演活動なども行う。ブランド・マネージャー認定協会2級&1級&ミドルトレーナー。








